小さな窓から見える世界 『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』

アマプラで観てよかったもの

 

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』

 

カナダの画家の実話を元にした映画。

貧しそうな小屋で絵を描いている女性(サリー・ホーキンス)の姿から物語が始まる。

 

厄介者として描かれている女性。

訪れたお店では家政婦を募集するぶっきらぼうなお爺さん?が現れる。

荒くれもので苦手なタイプ。

 

……実はイーサン・ホークでした。

あの女たらしみたいな風情は微塵もない。

『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離

ビフォア・サンセット

ビフォア・ミッドナイト

の「ビフォア」三部作では青年から中年へ経るまでの渋い魅力を放っていた。 

あのイーサン・ホークが少し太って? 不器用で武骨な男エベレットを演じていた。

 

二人のぎこちない関係が徐々にいい味を出していく。

二人のことを「くたびれたソックスみたい」と表現していたのには笑ってしまう。

片方は穴だらけで片方は伸びて灰色になっている……。

そう言いながらお互いを慈しみあっている姿にジーンとする。

 

男性は女性を最初は自分が飼っている鶏以下の存在の家政婦として扱っていたのが、

徐々に女性が絵を描く時間を得るために自分が家事全部を担うほどの様変わり。

モードも絵を人に認められて自信をつけていった。

彩りのない世界だったのが、

モードのおかげで文字通り生活に色が加わり小さな小屋が

明るい色彩に囲まれる可愛い家になった。

愛し愛されて……世界で生きている実感が二人に湧いてきた幸せな日々。

 

モードは日常の小さな世界から

窓を見ながら四季折々の想像の広い世界を描いた。

想像はどこまでも広がり続ける。

まるで正岡子規が晩年、子規庵の狭い庭で様々な和歌を作ったことに

思いが繋がってしまった。

 

人間の想像力は狭い世界をいくらでも飛び越えることが出来る。

そしてお互いが尊重し合っていれば十分幸せな世界を作ることができる。f:id:katatumuko:20210307131403j:plain