周りにおせっかいな人がいるか―『竜とそばかすの姫』を観て

『竜とそばかすの姫』を先日観に行った。(注:ネタばれあり)

昔から娘たちを連れて細田守監督の作品をずっと観てきた。

 

夏の青空が気持ちよい。これから何か起きそうな……。

ところどころ、『時をかける少女』『サマーウォーズ』を思い出させる描写がある。

 

映画の中の歌声が伸び伸びとしていてとても素敵。
普段すずが喋っている時のぼそぼそとした感じがなくなって、本当に同じ人が歌っているの? 
という感じだった。

ぼそぼそとした喋り方はすずの頑なな心を表わしているのだろう。
それが歌っていくうちに自信をつけて伸び伸びと心が解き放たれていく。

バラードの歌声が主体になっていて
他の楽器の音は最小限でとてもシンプルだから
ストレートに歌声の素晴らしさ、メッセージが胸に響く。

 

小学校の時にお母さんが亡くなってから
すずの心がとても頑なになってしまった。
家族のお父さんに対してまで……。

殻にこもってしまった頑なな心の人は
他の孤独な心の人を見出す。
心の叫びが見える。
だから竜が気になって仕方ない。

 

一方で家族のお父さんの気持ち……。
娘であるすずと小学校の時からまともな会話をしたことがないっていう……。
そんなに待てる? 娘の成長を?

そこまで黙って娘が心を開けるのを待てるお父さんは、えらい。
その裏ではあの合唱団(?)のおばさんたち(母親の友達)の支えがあったからなんだと思う。
裏では絶対に娘の様子を逐一あのお父さんに伝えていたはず。
小さい時から友達の娘であるすずを見守っていたから。
おせっかいにすずの家族を支えてきたから。

 

すずのお母さんも、ある意味おせっかい。
自分の子の傍にいることよりも他の子を救って死んでしまったから。
自分の命よりも他の子の命を優先したから。

そうして成長したすずもおせっかい。
どこの誰だか分からないあの子(竜)を助け出そうと
自分のプライバシー、命を投げ出したから。

 

人は人、という人間関係が希薄になってしまったこの世の中で
周りにおせっかいな人がいるだろうか。
自分も含めて……。

誰かが助けを求めたら、本気で助けにいけるか。

そのためには共感力がなければできない。
自分と同じ人間で、助けを求めていると感じないと。
そして実行力もないと……。

周りの空気を読み過ぎて人の心に踏み込むことをためらってしまう。
そうすると益々相手は心のSOSを発しづらくなってしまうのではないか。
ちょっとはおせっかいの心も必要ではないかな。
自分も含めて。

 そんなことを考えさせられる映画だった。

 

 

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