忘れられない本……3

今週のお題「読書の秋」

忘れられない本の続き。

 

3.『終わらざる夏』(浅田次郎著:集英社刊)

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1945年8月15日。終戦記念日のはず……。

しかし、北海道より先の千島列島よりさらに北の占守(シュムシュ)島。この島ではまだ戦いが終わっていなかった。

そこには当時では老兵と呼ばれた45歳の男、鬼軍曹と呼ばれた男、軍医の男の3人が戦争末期に召集されていったのだ。

召集されるまでの男たちの家族との関係等、それまでの生きざまも語られていく。

決して戦争で命を落としたくなかったのに、それももう終わるはずだった戦いに巻き込まれてしまった人たち……。

ここでもシベリヤ抑留の強制収容所の話が出てくる。

 

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平和だったら、それぞれの生活で生を全うしようとしていたはずなのに……。

これでもかと人々に困難を強いる戦争。

 

3人や家族にとってのかけがえのない日常が戦争によって中断されてしまった。

それは日本人ばかりではない、ソ連軍にとっても同じであった。

国を違えてもそこには個人の意思を超えての戦いの犠牲があった。

そこにもかけがえのない日常があったのだ。

 

浅田次郎による巧みなストーリー展開によって飽きずに読み通すことができる。

本当に戦争の悲惨さと、人間の尊さが感じられる作品であると思う。