幼稚園で泣いた訳
今週のお題「お弁当」
「お弁当」と言えば、幼稚園のお弁当。
昔々のこと、アルマイトのお弁当箱というのがあった。
それを幼稚園に持っていくと、温かいところで保温してくれていた……と思う。
すごく思い出す……赤くてチューリップかカーネーションの花が書かれてあったお弁当箱。
あれはもしかして母のお下がりだったのだろうか。
とにかく、そのお弁当箱を持っていって
お昼に蓋を開けると、そこはピンク一色の世界が広がっていた。
私は「わーっ、綺麗」と思っただろうか。
反応は真逆である。
なんとご飯の上にピンク色の桜でんぶがのっていたのだ。
それは甘い甘い食べもの。
今では甘い物も大好きだが、そのときはむしろ甘すぎるものは嫌いだった。
それもお菓子でもなく、ご飯の上に……。
そのときはおはぎも嫌いな食べ物だった時代。
私は一口食べて又そっと蓋をした。
他のおかずは何もなかったと思う……。
家の食卓でも食べたことがないものがのっていたのだ。
ずいぶん先生に心配された。
「○○さん、どうしてお弁当食べないの……?」って。
私は自分の思いを口に出すことが出来ずに
ただ泣きべそをかいていた。
私がそのとき思っていたこと……
何が悲しくてこんな甘い物でご飯を食べなくてはならないのだ
……と、お弁当を食べることを拒否していたのだ。
私は家に帰って母に抗議した。
そうしたら母は
「他の人のお弁当に入っているのを見て、○○も喜ぶと思って……」と。
そのときもただ泣きべをかきながら
「もうやめてよ」と
一口しか食べていないお弁当箱を渡した。
母の思いを無駄にして悪かったとは思うが……
そのときお腹が空いていたはずだが、その記憶はほとんどなく
ただ、お昼に悲しい思いをしたことだけが記憶されている。
それ以降、今までの人生で桜でんぶが我が家に登場したことはなかった。
さらに、幼稚園のとき
毎日母はゆで卵を半分に切ったものをお弁当に入れていた。
そうしたら私のそばに座っていた男子が
「お前、毎日ゆで卵持ってくるな」
と、私をからかった。
泣き虫な私はまた目に涙を浮かべていただろう。
その男子に口で反撃出来なかった私をもどかしく思う。
昔にさかのぼって私を助けてあげたい。