『じいじが迷子になっちゃった』を読んで

『じいじが迷子になっちゃった』(城戸久枝著)(偕成社刊)を読んだ。

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こちらは以前読んだ『あの戦争から遠く離れて――私につながる歴史をたどる旅』(情報センター出版局、新潮文庫刊)という作品を元に書かれたもの。

 

著者の父親・城戸幹は中国残留孤児として日本に初めて帰国した人である。
まだ中国残留孤児という言葉が一般的でない時代に自力で自分の身元を探り出して日本に帰ってきたのである。

 

第二次世界大戦で日本が敗戦したときに満州から日本人が大勢引き揚げるときの混乱で中国に取り残された城戸幹(父親)。

幹は中国では中国人の両親に引き取られて愛情深く育てられた。
しかし、敵国だった日本人の子ということで「小鬼子」と呼ばれたりして差別を受けながら育った。しかし幹はそれにも負けず勉強を頑張り、上を目指す。
貧しいながらも進学していって大学に受かるところが、「日本人」として生きることを選んだことで又さまざまな困難が降りかかる。
そして日本の両親は誰なんだろうということから自ら調査して日本に手紙を送ったりして自分の両親を探す。

児童書の中では詳しくは触れられないが『あの戦争から遠く離れて』の中ではその困難な個所も詳細に書かれている。
毛沢東文化大革命の中で危険な目にあったこととか……。

 

著者である城戸久枝は日本に生まれ育っているので自分の父親が日本語が上手でなかったり、中国語を喋ること等を恥ずかしく思っていたそうだが、中国に留学をして自分のルーツを巡ることをしている。そこで父親の苦労を辿っていった。そして自分が子どもができて又その物語を自分の子どもにも伝えようとしている。自分がどこから来たのか。その親がどんな困難な道を歩んでこの自分の命が繋がれてきたのか。

そしてすべての人に問いかけている。

あなたが今ここに生きているということは、その前の祖父母が戦争を生き延びてきたからここに命があるということを……。

 色々な戦争の話を読むとそのことは、しみじみと自分の心に刻まれる。
どのように祖父母達が戦争を生き延びてきたのかということを。

 

以前、祖母から聞いて思い出すこと……。

焼夷弾が空から落ちてきたときに祖母は耳を塞いでうずくまっていた。
その後に起き上がると木の傍で人が倒れていたのだという。
それから、戦争中はさつま芋や芋がらばかり食べていたので今は食べたくない……
というようなこと。

様々な困難を経て私の命も繋がれてきたのである。