娘の高校受験日にライブ参戦計画する不思議な親

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

 

まだかな~。
寒すぎるのよ~。

 

その日は2月のとても寒い日だった……。
駅の改札を抜ける風が
コートを突き抜けるぐらいに……。

 

その日……下の娘の高校受験の日だった。
私はその高校の最寄り駅で娘を待っていた。
何故に?

娘と一緒にK-POPライブに行くために
待っていたのだ。
(一度自宅に帰るとライブ会場に遠くなってしまう)

 

娘にサプライズするために
ひたすらソワソワしながら待っている私。

制服で受験している娘のために
着替えまで持って……。

 

試験が終わる大体の時間は分かっているが
ここにいることも
内緒だったのである。

 

その日の朝は

「とにかく受験が終わったら携帯に電話して」
という伝言だけは伝えておいた。
受験頑張ってと思う気持ちももちろんあったが、
ライブに行くんだ……ワクワク……という気持ちのほうが
大きかったことは否めない……、不謹慎な母親……。

 

そしてやっと駅に娘が姿を現わした。

「お~い!!」

私は笑顔で娘を迎える。
「今日は〇〇のライブだから、一緒に行こうね!」

……娘はそんなに驚いてる様子もない……。

何故に?

「ママがカレンダーに〇〇ライブって書いてあったから
行くのかな?と思っていたよ」

え~!?
そんなバレバレだったとは……
私専用のカレンダーだったけど
皆から見えるところにあるから見る……か。

 

とにかくトイレで娘を私服に着替えさせて
その足で東京ドームへGo!!

 

◇◇◇◇◇

 

あれは前に上の娘が某K-POPアイドルのライブのDVDを観る?
と言ってきたときだった。

私は
「そんな派手なグループ興味ないな」とつれない答え。
そんな私の脇で娘たちがDVDを観始めた。


……あれ?この曲知ってる。
うん、一時期流行ったよね。
ふーん。


そして他の曲。
ふーん、いい曲もあるね。

 

そして他の曲。
ふーん、ノリが良いね。

 

……そうこうしているうちに
私も2人の娘に交じって
テレビの画面の前で膝を乗り出して観るように。

 

そして曲の合間のおしゃべりタイム。
何なのこのグループ、面白い!
たどたどしい日本語を喋るメンバーと、
日本語上手なメンバーと。
グループでわちゃわちゃやっているのも
何かほのぼのしていて面白い。

そのうち私たち3人で
笑ったり
突っ込んだり
大はしゃぎ。

今度はライブに行きたいね!!

と、いつの間にかそういう話になった。

 

そして今思えばその時はそのグループの絶頂期だったと思う。

その年のMama(アジアの音楽授賞式)で賞を取った模様とか
ネット画面をよく眺めていた。
そしてお決まりのグループの誕生物語を
古いネット画像から探し出してきて
大いに盛り上がったり。

 

私も在宅でパソコンの仕事をしていたし
娘も受験生でイライラしていたから
ストレス発散にそれらの画面を一緒に観るのが本当に息抜きになった。

そしてファン同士が一緒に暮らしているというのは
いつでもそのメンバーの話をすることが出来て
熱がいつまでも冷めない。
くだらないことでもすぐにキャッキャと盛り上がり……。

私はそれまで何かのアイドルにハマったことが一度も
なかったので本当に楽しかった。

 

曲も大好き、決してイケメン揃いのメンバーでないけど
それぞれの個性を発揮している姿を見るのが本当に好きで
愛情を持って見守ることができた。

 

◇◇◇◇◇ 

 

そうして迎えたライブの日……。

ビギナーズラックだったのだろうか、
そのグループの初めてのライブは
東京ドームでは前の方であった。

輝いているメンバーのキラキラしている姿を観て、聴いて
夢の一夜だった……。
まさか、自分がこのような年齢になって
夢中になるものが現われるとは……。
自分でも驚き……。

 

新大久保に行ってK-POPショップに行ったり
そのうち大阪までも行っちゃうなんて、その時は思いもよらなかった。
推しが出来るということはこんなにも日常を彩りのある生活にしてくれる
ものなのだと思った。

 

肝心の受験を終えて
無事娘がその高校に合格したことには
胸を撫でおろしてホッとしたことであった。
こっちが本当は大事なんだけどね。
娘も嫌な受験を忘れられたよ、素敵なプレゼントありがとう、
と言ってくれた。

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