時代と国が違うけれど共感できる……『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んで
足を踏んでいる人は、自分が足を踏んでいることに気づかないという。
足を踏まれている人がこんなに痛みに耐えているのに……。
前から気になって図書館で予約していた『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著:筑摩書房刊)を読み終わった。これもまた女性の生きづらさを語った話だった。
どうしてもそのような物語に目が行きがちである。
主人公のキム・ジヨンが結婚、出産を経て仕事を辞め、家事・育児に追われるうちに母・祖母のような言動を繰り返すようになる。心配した夫が精神科に連れていく……。
私も職場で上司にセクハラ、パワハラという言葉もなかった時代に、そのようなことを多かれ少なかれ体験して、目にもしてきた。
そして結婚、出産を経ての育児……。
ワンオペ育児という言葉がまだなかった昔を思い出す。
ただ、自分は実家に帰省しての出産だったのでその部分は相当実家にはお世話になった。
しかしその時も、乳飲み子の世話をするのに3時間おきのオムツ替え、母乳、ミルクの用意、それだけに集中していたのにもかかわらず、ヘトヘトだった。だが、今思えばその2か月ぐらいが天国だった。
実家から帰ってきて、夫は赤ちゃんがいる生活というものが何もわかっていなかった。
夜中どんなに子どもが泣いても、ぐっすりと横で寝ている夫……。
こちらは3時間おきの授乳とオムツ替え……、さらに家事。実家も遠く、知り合いもいない土地で本当に孤独だった。
夫は土日も仕事だったために、私は仲間を求めて色々なところに顔を出すようになった。
公園デビューして子どもの友達を作ることよりも、自分の友達が欲しかった。
色々な託児付き講座とかあると、ベビーカーやオムツや着替えの入った大きなバッグを担いで出かけていた。
そうこうしているうちに、仲間も出来て私は孤独から脱出することが出来た。
昔の長屋みたいなところに住んでいたので、近所の人たちもいい人が多くて、子ども同士を遊ばせたりして楽しい日々を過ごすことが出来た。
このようなことがなければ私はいつしか精神的に病んでしまっていただろう。